FAQ


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多くの化学物質が造り出され、多様な用途に使われるようになったことに伴って、化学物質の安全管理は、従来の、法などの手段により「危険な物質」を規制し、出来るだけ使わないようにすると言うハザード管理から、「全ての物質は潜在的に危険・有害性を持っており、その物質が実際に人体、環境生態あるいは物理的に危険であるか有害であるかはその量による」という考えに基づき、それぞれの使用用途にあった適正な管理を行うという、リスク評価を基とした総合安全管理へと移行しております。
リスクとは、ある仮定に基づいてその有害危険性を予測し、危害が発生した場合の被害の大きさと、その危害が起こり得る確率とで表すと定義されており、また、リスク管理とは、リスク評価の結果予測されるリスクの大きさが「許容されるリスクレベル」より高い場合に、そのリスクを下げる方策を講ずることであり、その「許容されるリスクレベル」はその時のリスク・ベネフィットで決まるとされております。
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PL法の施行により、企業が行うべき安全管理に関する自己責任が問われるようになりました。
従来の様に規制という護送船団に守られ、規制の項目だけを遵守していれば良いという横並び的な発想で出来るだけコストを下げて来た時代は終わりました。これからは自らの責任において基準を決め、自らの責任において実行して行かねばなりません。
もちろん我々は、現在進めているリスクアセスメント・システム構築の仕事を通し、国際的な水準や、いま社会が求めている安全管理のレベルについての情報はお示しすることはできますが、これらはあくまで参考情報であり、この水準を守っていればよいと示しているものではありません。
決断するのは貴方自身です。
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「水と安全はタダ」と永い間いわれてきました。そのため、安全のために費やす経費は損失を低減するためのコストとされてきました。
しかしながら、今や安全は立派な性能です。例えば、可塑性に優れた新しい可塑剤を開発した場合、プラスチックに添加する量が少なくて済むというだけでなく、その可塑剤を含んだプラスチック容器を使用中に、可塑剤が滲み出る量も少なくなり、消費者が安心して使えるというメリットが出てきます。
すなわち、安全性を高めたということは、性能を改良したと同じ付加価値を生み出しており、当然高い値段で取引されます。逆に言えば、我々は日常の営業活動の中で、性能アップと同じ範疇で安全性の向上を声高に主張して行かなければなりません。
リスクアセスメント(RA)やレスポンシブルケア(RC)のための経費は、製品の品質改良のための重要な開発経費です。
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MSDSとは、Material Safety Data Sheet の略です。国際的には、SDS(Safety Data Sheetの略)が使用されています。ISOでは、Safety Data Sheet for Chemical Product (ISO 117014) といい、日本では化学物質等安全データシートまたは製品安全データシートといいます。

MSDSは、一般的に労働現場における化学物質管理の中で使用されているものです。 MSDSは、化学物質や化学物質混合物のハザードアセスメントの結果を一定の様式のシートに記載したものです。化学製品の危険有害性(ハザード)情報を提供し、災害・事故を未然に防止することが最大の目的です。

MSDSには環境ハザードを含むハザードについて記載されているため、労働現場以外でも重要な情報源となります。リスクアセスメントを行う場合にも、ハザード情報源として使用することができます。
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日本でMSDSを規制する法規は、次の3法です。

1.特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(略称:化学物質管理促進法)(MSDSは平成13年1月1日施行)
2.労働安全衛生法(略称:安衛法)(MSDSは平成12年4月1日施行)
3.毒物及び劇物取締法(略称:毒劇法)(MSDSは平成13年1月1日施行)

以上の他に、化学物質の安全性に係わる情報提供に関する指針(厚生労働省/経済産業省告示第1号、平成5年3月26日、平成13年3月30日改正)と化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針(労働省告示第60号、平成4年7月1日)があります。

それぞれの法規の問合せ官庁は以下のとおりです。

1.化学物質管理促進法(略称)
「問合せ先」経済産業省製造産業局化学物質管理課
電話番号:03-3501-0080
ホームページ:
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/
2.労働安全衛生法
「問合せ先」厚生労働省 労働基準局安全衛生部 化学物質調査課
電話番号:03-3502-6756
ホームページ: https://www.mhlw.go.jp/

3.毒物及び劇物取締法
「問合せ先」 厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室
電話番号:03-3595-2298
ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/
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MSDSに関係する資料には、MSDS制度、作成方法、ハザード情報源、MSDSのモデル例など多種多様のものがあります。最近、インターネットでもかなりの情報が入手できるようになりました。
(社)日本化学工業協会では、平成13年10月に「製品安全データシートの作成指針(改訂版)」を発行しています。資料の詳細は、日化協ホームページ(https://www.nikkakyo.org/)の刊行物のページか、日本規格協会にお問い合わせ下さい。
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「内分泌かく乱」とは、「内分泌作用」すなわち「ホルモンによる働き」が「かく乱」(崩壊、粉砕、あるいは混乱)をきたすことですので、「内分泌かく乱」とは、「ホルモンの働きが崩壊したり混乱する」ことです。しかし、「内分泌かく乱」という言葉が、何か特定の「有害性」を示すわけではありません。というのは、「内分泌かく乱」というのは、有害性を引き起こす「メカニズム」であり、「内分泌かく乱」そのものが有害性を示す言葉ではないからです。
化学物質の中には、「内分泌作用」を持ったものがあり、大量に摂取された場合には、「内分泌作用」が「かく乱」され、結果として有害作用が引起こされる場合があり、このような物質を「内分泌かく乱物質」と定義しています。
しかし、「内分泌(ホルモン)作用」を持つ物質を大量に摂取しても、直ちに「有害作用」が引起こされるわけではありません。一般的に、化学物質を大量摂取すると何らかの有害性が引起こされますが、「内分泌かく乱」以外の有害作用が先に引起こされ、「内分泌かく乱」による有害作用が引起こされないこともあります。
また、逆に、他の有害作用が原因となって、二次的に「内分泌かく乱」が引起こされ、それによる有害作用が発現することもあります。

現在、内分泌かく乱物質問題で取りざたされているのは、女性ホルモン(エストロゲン)、男性ホルモン(アンドロゲン)および甲状腺ホルモン(チロキシン)です。これらのホルモン系がかく乱されることにより、「人や野生生物の生殖、発生などの局面における”種の存続”に関わるような障害性の影響」が引起こされることが懸念されています。例えば、人では、「子宮がん、子宮内膜症、乳がん、精子数の減少、前立腺がん、精巣がん、尿道下裂など」が内分泌かく乱により引起こされていると想定されています。しかし、内分泌作用を持つ化学物質により、実際に、これらの疾患が引起こされているかどうかについては、明らかではありません。

<参考資料>
1)R.L.Cooper and R.J.Kavlock, Journal of Endoctrinology 152, 159-166 (1997)
2)岩本晃明および野澤資亜利、「日本臨床」58, 2514-2520 (2000)
3)曽根秀子、「日本臨床」 58, 2521-2526 (2000)
4)今井田克己および白井智之、「日本臨床」 58, 2527-2532 (2000)
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『奪われし未来』には、『天然に存在するホルモン類似物質と合成されたそれとは全く別ものであることを認識することが大切である。というのも、天然の植物エストロゲンは1日もあれば対外に排泄されてしまうが、合成化学物質のほうは体内に何年も残留してしまうからである』との記述があります。DDTやPCBなどの一部の有機塩素系化合物は、確かに残留性の高いことが知られていますが、ホルモン作用を持つ合成化学物質が全て残留性が高いとする認識は間違いです。
物質の残留性(体内から排泄されにくい性質)は、「天然化学物質」であるか「合成化学物質」であるかに関係なく、それぞれの物質の構造などによって決まる固有の性質です。
ベンゼン環に多くの塩素分子を持つDDTやPCBは、体内に吸収されると、肝臓で一部の塩素がはずれるなどの代謝を受けますが、それ以上には代謝されにくいことが分かっています。その結果、脂溶性の高い代謝物が脂肪組織などに蓄積されることになります。このように脂溶性が高く、代謝を受けにくい物質は、体内にいったん摂りこまれると脂肪組織に長期間にわたり残留したままとなります。体内で脂肪組織が多いのは、脳や乳房です。脂肪組織に蓄積したPCBやDDTは、それ自体では、有害性を発揮することはないと考えられていますが、脳の場合には、PCBやDDTの酵素阻害作用により脳機能が影響を受け、神経毒性が発現することが知られています。

生体が自ら産生する女性ホルモン(エストロゲン)や植物エストロゲンあるいは弱い女性ホルモン活性を有するビスフェノールAなどは、体内では、まず、ベンゼン環に水酸基が付加されます。最終的にはグルクロン酸や硫酸などの水溶性の高い分子が結合し、結果として、水溶性物質に代謝されます。このような水溶性が付加された物質は、血液を経由して腎臓でろ過され、尿中に排泄されたり、肝臓から胆汁へ排泄されたりするため、体内に蓄積することがないというわけです。フタル酸エステルも同じくグルクロン酸に抱合されて体外に排泄されます。

<参考資料>
1)J.G.ライヤー、A.ソマサンダラム、D.ロイ、「人間における外因性エストロゲンの代謝と運命」、IUPA編、『エンドクトリン白書』、宮本純之監訳、化学工業日報社、p.181-197 (1999)
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内分泌かく乱物質問題に対しては、レスポンシブル・ケア活動の一環として、日米欧の化学産業界が連携して、試験法の開発、内分泌かく乱作用のメカニズムの解明、人健康および環境生物に対する影響に関する調査・研究などを実施しています。日本の化学産業界もその枠組みの中でこの問題に取り組んでいます。

日本では、(社)日本化学工業協会(日化協)および製品ごとの業界団体が各種の研究を実施しています。このうち、日化協では、1996年9月に、内分泌かく乱物質問題に関する対応組織として「エンドクトリンワーキンググループ」を設置し、?試験法の開発、?内分泌かく乱物質問題に関する教育・広報、?関連情報の収集、?規制動向についての調査等を行っています。また、1998年3月には、会員各社より総額1億4000万円を募り、日化協の独自研究を実施しました。研究内容は、内分泌(ホルモン)作用を迅速に見分けるための試験法(スクリーニング試験法)の開発です。ネズミを用いる試験法についての研究成果は、経済協力開発機構(OECD)が行っている標準試験法確立のための基礎データとなり、試験法の開発に寄与しています。また、メダカを用いる試験法は、OECDの標準試験法確立のための基礎データとなり、試験法の開発に寄与しています。また、メダカを用いる試験法は、OECDの標準試験法の候補として検討されています。

<参考資料>
1)https://www.americanchemistry.com/
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化学産業界は、レスポンシブル・ケア(RC)活動と呼ばれる自主的な化学品の安全管理活動を行っています。これは、化学物質を製造または取扱う事業者が、「自己決定・自己責任の原則に基づき、化学物質の開発から製造、物流、使用、最終消費、廃棄の全過程にわたって、環境保護、保安防災、労働安全衛生、化学品安全の全てにつき、継続的な改善、発展を目指すことを、経営者が宣誓、実施し、かつ、その計画、成果を社会に公表していく自主管理活動」です。
現在、日本の化学産業界は、「リサイクル」および「省エネルギー」をRC活動の一環として推進しています。また、個々の企業は、それぞれの製品の安全性についての研究を進めています。
国際的な取組みとしては、PRTR (Polutant Release and Transfer Register) の推進、高生産量既存化学物質 (HPV:High Production Volume) の安全性自主点検事業、内分泌かく乱物質問題に関する自主研究および化学品安全性長期自主研究(LRI : Long-range Research Initiative) の推進などがあります。

RC活動は、1985年カナダ化学品生産者協会が自主的に開始し、国際的に拡がりました。1990年、国際化学工業協会協議会 (ICCA) が設立されるとともにRC活動を共通の活動として位置づけました。1992年、国連環境開発会議(UNCED)において「アジェンダ21(持続可能な開発のための人類の行動計画)」が採択されましたが、そのなかでもRC活動の重要性が強調されています。

日本でのRC活動の一例として、日化協のPRTR(前出、Pollutant Release and Transfer Register)への取組みを挙げることができます。
日化協では、1992年よりPRTRに関するデータ取得の標準化を自主的にすすめ、1997年1月から毎年、通産省化学品審議会において、排出量の集計データ等を報告してきています。なお、PRTRは、「特定化学物質の環境への排出量の把握等および管理の改善の促進に関する法律」(1997年7月公布)に取り入れられ、これに基づき、2001年4月から排出量の把握が義務づけられ、2002年秋には公表されることになりました。