フィジカルリスク(火災爆発危険度)の評価


健康や環境のリスクが長期間の暴露に基づく人や環境に対する有害影響を評価するのに対して、フィジカルリスクでは、化学物質を取り扱う際に生ずる事故などにより発生する人や構造物などに対する被害の大きさ(影響度評価)とその発生する確率(暴露評価に類似)を評価します。

化学物質取り扱いのフィジカルリスクを評価する際には、その取り扱われる条件(例えば、反応、蒸留、貯蔵、乾燥など)だけでなく、化学物質の物性によっても事故発生の確率が変化するのでその考慮が必要です。その結果、図7のハザードの特定の中で、物質ハザードとプロセスハザードを決定し、事故が起こった時の影響結果を決定します。想定している影響の例は、ジェット火災、プール火災、フラッシュ火災、BLEVEおよび圧縮ガスまたは反応物質による爆発です。また、そのヒトや構造物に対する被害は、輻射熱、爆風圧、非着火放出による毒性の評価により、それぞれの被害の大きさを計算します。

同時に、その取り扱い条件下での事故発生確率を推定するために、それぞれの条件での事故が起こる最初の事象(発災事象)をFTAにより展開し、その合計として汎用の発生頻度を算出します。発災事象毎にETAにより展開し前述の影響結果に至る確率を推定します。
リスクの表示方法については、被害の大きさと発生確率の双方を表示しますが、被害の大きさの表示には一般に「集団のリスク」と呼ばれる、被害を受ける影響範囲の人口(工場敷地内と工場敷地外の両方)と構造物の数とにより推定される値を使用します。構造物においては、全壊・半壊などの爆風圧および熱輻射量の基準値により影響の範囲を定めて被害を推定します(例えば、爆風圧の全壊の基準は35kPa、ガラスの破壊は1kPaを基準とする、など)。一方ヒトに対する被害は、基準値によらず、エンドポイント毎のプロビットで表示します。

図7 フィジカルリスク(火災爆発危険度)の評価手順

生産設備の危険度評価は、HAZOPやFTAなど数々の評価方法が提案されていますが、いずれも設備それ自体の安全性を評価する方法であり、今回対象としている化学物質と操業条件との兼ね合いで安全性を評価するには適しません。

反応機構を考慮して化学物質の安全性を評価する方法として昔から広く用いられている方法にDOW法があります。DOW社が開発した方法で、設備の危険度評価以外に反応の危険度により補正を行っています。

 生産設備は、元来それ自体は安全に設計されており、通常の操業状態では危険性は極めて少ないと言えます。しかしながら、操作ミスなどの突発的な異常が重なり、攪拌機の停止や冷却装置の作動不良などが起こり、異常反応から圧力が上昇し、装置の破壊などに至る可能性を常に持っています。このような潜在的な危険性を操業条件などの要因を加味しながら、リスクを算定することにしています。